ベトナムが水産物の生産・輸出において、2026年までに輸出額115億ドル、総生産量1000万トン超という意欲的な目標を掲げていることが報じられました。この目標達成の背景には、単なる増産だけでなく、生産管理体制の高度化が不可欠であり、日本の製造業、特に食品関連のサプライチェーンに与える影響は小さくないと考えられます。
ベトナムが掲げる水産物輸出の国家目標
報道によれば、ベトナムは水産業における国家的な目標として、2026年までに総生産量を1000万トン超とし、輸出額を115億ドルに引き上げる計画を明らかにしました。これは、同国が水産物の生産・加工における国際的な供給拠点としての地位をさらに確固たるものにしようとする強い意志の表れと見てよいでしょう。日本の食品産業にとっても、エビや魚介類の加工品など、ベトナムは重要な調達先の一つであり、その動向は無視できません。
目標達成の鍵を握る「生産管理」の高度化
注目すべきは、元記事で「生産管理(production management)」という言葉が使われている点です。1000万トンという生産規模と115億ドルという輸出額を達成するには、単に漁獲量や養殖量を増やすだけでは不十分です。輸出先である先進国の厳しい品質基準や食品安全要求に応えるため、生産から加工、出荷に至る全工程での高度な管理体制が求められます。具体的には、品質の安定化、歩留まりの向上、HACCP(ハサップ)などの食品安全マネジメントシステムの徹底、そしてトレーサビリティの確保などが不可欠となります。これは、日本の製造現場で日々行われている改善活動や品質管理の考え方と軌を一にするものです。現地の加工工場では、5Sやカイゼンのような日本的な手法も取り入れられながら、生産性の向上と品質保証レベルの向上が同時に進められている可能性が考えられます。
日本のサプライチェーンへの影響
ベトナムにおける生産管理の高度化は、日本の製造業、特に調達部門にいくつかの影響を及ぼすと考えられます。第一に、品質が安定し、供給能力の高いサプライヤーとして、ベトナムの魅力はさらに増すことになるでしょう。一方で、価格交渉だけでなく、サプライヤーがどのような品質保証体制や生産管理システムを構築しているかを評価する、より専門的な視点が調達担当者には求められるようになります。監査や現地確認の重要性も増していくはずです。また、これまでは日本国内で担ってきた高度な加工工程の一部を、品質管理レベルの向上したベトナムのサプライヤーへ移管するといった、サプライチェーン全体の最適化を検討する企業も増えるかもしれません。
日本の製造業への示唆
今回のベトナムの動向から、我々日本の製造業は以下の点を実務的な示唆として捉えるべきでしょう。
1. サプライチェーンの再評価と深化:
ベトナムをはじめとするアジア諸国の生産能力・品質管理レベルの向上は、もはや疑いようのない事実です。これを前提に、自社の調達戦略やサプライヤー・ポートフォリオを再評価する必要があります。単なる「低コストな調達先」ではなく、品質と安定供給を共に追求する「戦略的パートナー」として、サプライヤーとの関係を再構築することが求められます。
2. 品質保証のグローバルな協調体制:
海外サプライヤーの品質レベルが向上するからといって、受け入れ検査を簡略化できるわけではありません。むしろ、自社の要求品質を明確に伝え、製造プロセスのどの段階でどのような管理が行われているかを共有・確認する、より協調的な品質保証体制の構築が重要になります。現地の工場と一体となった品質改善活動も有効な手段となり得ます。
3. 技術・ノウハウという新たなビジネス機会:
ベトナムの産業高度化は、日本の製造業が持つ生産管理技術や品質管理ノウハウを提供する好機とも捉えられます。例えば、IoTを活用した生産ラインの見える化やトレーサビリティシステム、省人化・自動化技術などは、現地の工場がまさに求めているソリューションかもしれません。こうした技術協力を通じた新たなビジネス展開も視野に入れるべきでしょう。
海外の生産拠点が力をつける中で、日本の国内工場が担うべき役割を改めて問い直すことも重要です。高付加価値製品の開発・製造、マザー工場としての技術開発機能、あるいは国内市場向けの多品種少量生産への特化など、グローバルな生産体制の変化を見据えた戦略的な棲み分けが、今後の競争力を左右することになるでしょう。


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