ある海外企業の株価上昇のニュースをきっかけに、製造業の枠を超えた事業価値向上の可能性について考察します。一見、無関係に見える企業の活動から、日本の製造業が学ぶべき「サービス化」や「バリューチェーン拡張」のヒントを探ります。
はじめに:異業種の動向から何を学ぶか
昨今、市場のグローバル化や顧客ニーズの多様化により、日本の製造業も大きな変革期を迎えています。製品の品質や性能で差別化を図ることが難しくなる中で、新たな付加価値をいかにして生み出すかが重要な経営課題となっています。今回は、直接的には製造業と関わりのない海外企業の事例を参考に、事業の可能性を広げるための視点について考えてみたいと思います。
事例の概要:あるエンターテイメント関連企業の多角的な事業
元となった記事では、TryHard Holdings Limitedという企業の株価が大きく上昇したことが報じられています。この記事で注目すべきは、同社の事業内容です。同社は、イベントの会場管理、アーティストのプロデュースやマネジメント、警備、さらには食品提供といった、コンサルティングやマネジメントサービスを幅広く手掛けています。これは、単一のサービスを提供するのではなく、イベント開催という一連のプロセス(バリューチェーン)において、顧客が必要とする様々な機能を包括的に提供するビジネスモデルと言えるでしょう。
製造業における「サービス化(サービタイゼーション)」との共通点
このビジネスモデルは、日本の製造業で近年注目されている「サービス化(サービタイゼーション)」の考え方と通じるものがあります。これは、単に製品(モノ)を販売するだけでなく、その製品に関連するサービス(コト)を組み合わせて提供することで、顧客の課題解決に貢献し、新たな収益源を確保しようとする取り組みです。例えば、工作機械メーカーが機械の販売に加えて、稼働監視や予知保全、生産性向上のためのコンサルティングまでを提供するケースがこれにあたります。顧客は単なる「機械」ではなく、「安定した生産を実現するソリューション」という価値を得ることができます。
バリューチェーン全体を捉える視点
前述の企業は、イベントという体験価値を提供する上で必要な、企画、運営、警備、飲食といった様々な要素を自社で管理・提供しています。これを製造業に置き換えてみると、自社の製品が顧客に届けられ、使用され、廃棄されるまでのライフサイクル全体を見渡すことに相当します。単に「良い製品を作って売る」だけでなく、顧客の設計開発段階から関与する、導入後の運用を支援する、さらには保守・メンテナンスやリサイクルまでを事業領域として捉え直すことで、顧客との長期的な関係を構築し、代替されにくい競争優位性を築くことが可能になります。
日本の製造業への示唆
今回の異業種の事例から、日本の製造業が今後の事業を考える上で、以下の3つの示唆が得られると考えられます。
1. 事業領域の再定義:
自社を単なる「モノづくり企業」と捉えるのではなく、「顧客の課題解決を支援するソリューションプロバイダー」として再定義する視点が重要です。自社の技術やノウハウが、製品という形以外でどのように顧客に貢献できるかを多角的に検討することが求められます。
2. サービス化の具体的な検討:
製品に付随するコンサルティング、運用支援、保守・管理といったサービスの可能性を具体的に探ることが有効です。こうしたサービスは、安定的な収益をもたらすだけでなく、顧客の生の声やデータを収集し、次の製品開発やサービス改善に繋げるという好循環を生み出します。
3. バリューチェーンの拡張:
自社の強みは何かを見極めた上で、その強みを活かせる周辺領域へと事業を拡張する可能性を検討すべきです。それは、設計支援のような上流工程かもしれませんし、アフターサービスやリサイクルのような下流工程かもしれません。顧客にとっての利便性を高め、包括的な価値を提供することが、企業の持続的な成長に繋がります。


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