リアルタイムサプライチェーン可視化プラットフォームを提供する米FourKites社が、製造業に特化した顧客諮問委員会を設立したことを発表しました。この動きは、グローバル化し複雑さを増す製造業のサプライチェーンにおいて、顧客との連携を通じて課題解決を加速させようとする姿勢の表れと言えるでしょう。
背景:精度と俊敏性が求められる現代のサプライチェーン
FourKites社の創業者兼CEOであるマシュー・エレンジカル氏が述べているように、現代の製造業におけるサプライチェーンは、グローバルに広がる生産ネットワークを支えるために、極めて高い「精度」と「俊敏性」が求められます。部品の供給遅延一つが生産ライン全体を停止させかねないジャストインタイム(JIT)方式を採る工場も多く、輸送中のトラックやコンテナが今どこにあり、いつ到着するのかを正確に把握することは、生産計画の維持に不可欠です。
しかし、地政学リスクの高まりや異常気象、労働力不足など、サプライチェーンの寸断リスクは年々増加しています。このような不確実性の高い環境下で、従来のような電話やメールでの状況確認に頼った属人的な管理では、迅速な対応は困難です。リアルタイムの情報を基に、サプライチェーン全体を可視化し、問題発生を予見して先手を打つ能力が、企業の競争力を左右する時代になっています。
諮問委員会設立の狙い
今回FourKites社が設立した製造業顧客諮問委員会は、こうした業界特有の課題に対して、より深く切り込むことを目的としています。諮問委員会には、主要な製造業の顧客企業が参加し、現場の実務的な課題やニーズをFourKites社の製品開発チームに直接フィードバックします。これにより、単なる汎用的な機能開発ではなく、製造業の現場で本当に役立つ、より専門性の高いソリューションを生み出すことを目指しています。
これは、ITソリューションを提供する側が、顧客を単なる「利用者」としてではなく、共に価値を創造する「パートナー」と捉えていることの表れです。日本の製造業においても、改善活動などで現場の声を吸い上げる文化は根付いていますが、それを社外のパートナーであるITベンダーと公式な形で実践するこの取り組みは、注目に値すると言えるでしょう。
リアルタイム可視化がもたらす実務的な価値
では、サプライチェーンのリアルタイム可視化は、具体的にどのような価値を現場にもたらすのでしょうか。一つは、輸送遅延などによる生産計画への影響を最小限に抑えることです。例えば、ある部品を積んだトラックが渋滞で遅れていることをリアルタイムで把握できれば、工場側は生産順序を入れ替える、あるいは代替部品の供給を手配するなど、事前の対策を講じることが可能になります。
また、物流拠点での滞留時間や荷役時間といったデータを蓄積・分析することで、サプライチェーン全体のボトルネックを特定し、プロセス改善につなげることもできます。これにより、過剰在庫の削減やリードタイムの短縮、輸送コストの最適化といった、直接的な経営効果も期待できるのです。これは、工場の生産ラインにおける「IE(インダストリアル・エンジニアリング)」的な改善アプローチを、サプライチェーン全体に適用するようなものと捉えることができます。
日本の製造業への示唆
今回のFourKites社の取り組みは、日本の製造業にとってもいくつかの重要な示唆を与えてくれます。
1. サプライチェーン管理は「協調」の時代へ
自社内の効率化だけでは、グローバルな競争には打ち勝てません。サプライヤー、物流パートナー、そして顧客といったステークホルダー全体で情報を共有し、一体となって課題解決に取り組む「協調」的な姿勢が不可欠です。ITプラットフォームは、そのための重要な基盤となります。
2. データに基づく客観的な意思決定の重要性
長年の経験や勘も重要ですが、リアルタイムで得られる客観的なデータを活用することで、より迅速で的確な意思決定が可能になります。特に、予期せぬトラブル発生時には、データに基づいた状況把握と対応が事業継続の鍵を握ります。
3. 外部パートナーとの「共創」
自前主義に固執するのではなく、専門的な知見や技術を持つ外部のパートナーと積極的に連携し、共に課題解決を目指す「共創」の考え方がますます重要になります。自社の課題をオープンに共有し、パートナーの力を借りて解決策を探る姿勢が、新たな競争力を生み出す源泉となるでしょう。


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