英国に見るWAAM技術の産業実装 – 安全性と持続可能性の認証が拓く未来

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英国のDEEP Manufacturing社が、溶接技術を応用した金属積層造形(WAAM)において、安全性と持続可能性に関する重要な認証を取得しました。この動きは、新しい製造技術が研究開発段階から本格的な産業利用へと移行する上で、品質保証と客観的な信頼性がいかに重要であるかを示唆しています。

英国企業がWAAM技術で重要な認証を取得

英国を拠点とするDEEP Manufacturing社は、ワイヤーアーク式積層造形(WAAM: Wire Arc Additive Manufacturing)技術において、その生産プロセスが安全かつ持続可能であることの認証を取得したと発表しました。同社のCEOであるピーター・リチャーズ氏は、これを「チーム全体の大きな成果」であり、技術のさらなる妥当性を示すマイルストーンであると述べています。このニュースは、WAAMという比較的新しい技術が、産業界で広く受け入れられるための重要な一歩を踏み出したことを意味します。

WAAM技術とは何か? – 溶接技術の応用

WAAMは、金属3Dプリンティング技術の一種であり、その名の通り、アーク溶接の技術を応用しています。金属ワイヤーを材料とし、アーク放電によって溶融させながら一層ずつ積み重ねていくことで、三次元の立体物を造形します。この技術の大きな特徴は、比較的大型の部品を高速に製造できる点にあります。特に、従来の鍛造や大規模なブロック材からの削り出しで製造されていた部品に対して、材料の無駄が少ない「ニアネットシェイプ(最終形状に近い形)」での造形が可能となり、コストとリードタイムの削減が期待されています。

なぜ「認証」が重要なのか? – 品質と安全性の客観的証明

製造業、特に航空宇宙、エネルギー、防衛といった高い信頼性が求められる分野では、新しい技術やプロセスを導入する際に、その品質と安全性が客観的に証明されていることが不可欠です。今回のDEEP Manufacturing社による認証取得は、同社のWAAMプロセスが、定められた基準を満たす管理体制の下で運営されていることを第三者機関が認めたことを意味します。これは、顧客に対して技術的な信頼性を担保する上で極めて重要です。試作や研究開発レベルから、実際の製品を量産するフェーズへと移行するためには、こうした品質保証体制の構築が避けては通れない道筋と言えるでしょう。

安全性と持続可能性への視点

今回の認証が「安全性」と「持続可能性」に焦点を当てている点も注目すべきです。製造現場における安全性は、作業者の保護はもちろん、安定した生産を維持するための基本です。WAAMは、金属粉末を使用する他の積層造形法(PBF法など)と比較して、粉塵爆発のリスクや材料管理の煩雑さが少ないという利点があります。
また、持続可能性(サステナビリティ)は、現代の製造業における重要な経営課題です。必要な部分にのみ材料を積層するWAAMは、材料廃棄物を大幅に削減できるため、環境負荷の低減に貢献します。エネルギー消費やサプライチェーン全体でのCO2排出量削減といった観点からも、その有効性が評価され始めています。

日本の製造業への示唆

今回の英国企業の事例は、日本の製造業にとっても多くの示唆を与えてくれます。以下に要点を整理します。

1. 新技術の産業実装には「信頼性の証明」が不可欠
積層造形(AM)のような革新的な技術を実用化するには、技術的な優位性を示すだけでなく、品質保証体制を構築し、認証取得などを通じてその信頼性を客観的に証明することが普及の鍵となります。自社で新技術を導入する際も、その技術がどのような規格や認証に基づいているかを確認することは、リスク管理の観点から重要です。

2. 既存技術と知見の応用
WAAMは、長年にわたり製造現場で培われてきた溶接技術の延長線上にある技術です。日本企業が持つ高度な溶接技術や品質管理のノウハウは、WAAMのような新しい分野においても大きな強みとなり得ます。既存の知見をいかに新しい技術に応用し、付加価値を創出できるかが問われます。

3. 持続可能性を競争力に
材料使用量の削減やエネルギー効率の改善は、単なる環境対応だけでなく、コスト競争力を高める直接的な手段です。WAAMによるニアネットシェイプ化は、材料費の削減に加え、後工程である切削加工の工数削減にも繋がり、生産性向上に寄与します。自社の製造プロセスにおいて、持続可能性の視点から改善できる点がないか、改めて見直す良い機会となるでしょう。

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