海外事例に学ぶ:営業と生産、双方の知見を持つリーダーの重要性

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米国の農業関連分析サービス企業における人事のニュースが、日本の製造業における組織運営のヒントを示唆しています。本記事では、営業と生産管理の両方の経験を持つ人材がリーダーシップを発揮することの価値について、実務的な視点から考察します。

はじめに:専門分野における人事の動き

先日、米国の農業関連サービスを提供するRock River Laboratory社が、新しい営業責任者を任命したというニュースが報じられました。同社は飼料や土壌の分析などを手掛ける専門性の高い企業です。一見すると、日本の多くの製造業とは直接関係のない人事異動に見えるかもしれません。しかし、その新任者の経歴には、我々が学ぶべき重要な点が含まれています。

注目すべきは新任者の経歴

記事によれば、この新しい営業責任者は、営業のリーダーシップ経験に加え、「生産管理(production management)」においても長年の経験を有しているとのことです。特に、動物栄養という顧客の課題解決が製品の価値に直結する専門業界において、この経歴は大きな意味を持ちます。

顧客と直接対話する営業部門が、生産現場の能力や制約、技術的な可能性を深く理解していること。そして、製品を実際に生み出す生産部門が、顧客のニーズや市場の要求を正しく把握していること。この両者の連携が、企業の競争力を左右することは言うまでもありません。今回の人事は、まさにこの連携を体現できる人物を組織の要職に据えた事例と言えるでしょう。

日本の製造業における「営業」と「生産」の壁

この事例を、日本の製造業の現場に置き換えて考えてみましょう。多くの工場では、営業部門と生産部門の間に、目に見えない「壁」が存在することが少なくありません。営業は「もっと安く、もっと早く、多様な仕様で」と市場の要求を伝え、生産は「安定したロットで、標準品を効率的に」と現場の論理を主張します。この立場やKPIの違いから生じる対立は、時に迅速な顧客対応を妨げ、機会損失や過剰な社内調整コストの原因となります。

特に、技術的なすり合わせが重要なBtoBの製造業において、営業担当者が生産の知識なしに顧客と仕様を詰め、後から「それは作れない」という事態に陥るケースは、多くの技術者や工場長が経験していることではないでしょうか。

両部門の経験を持つ人材の価値

今回のRock River Laboratory社の事例が示すように、営業と生産、両方の実務経験と視点を持つ人材は、組織にとって極めて貴重な存在です。彼らは、顧客の抽象的な要望を生産現場が理解できる技術要件に「翻訳」し、逆に生産現場の制約や改善提案を営業戦略に活かすための「橋渡し」役を担うことができます。

このような人材がリーダーシップを発揮することで、より現実的で付加価値の高い製品開発や受注活動が可能になります。結果として、部門間の不要な対立は減り、組織全体として顧客価値の創造に集中できるようになるのです。これは、個々の部門の効率化を追求するだけでは得られない、組織全体の最適化と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

この海外の小さな人事ニュースから、日本の製造業が学ぶべき点は多岐にわたります。以下に要点を整理します。

1. 人材育成における複眼的視点の導入:
将来の幹部候補やリーダー層に対して、営業と生産(あるいは開発、品質管理など)のジョブローテーションを制度として組み込むことを検討すべきです。片方の部門に長くいる専門家も重要ですが、部門の垣根を越えて全体を俯瞰できる人材を意図的に育成する戦略が、企業の持続的成長に不可欠です。

2. 組織的なコミュニケーションの仕組み化:
個人の能力に依存するだけでなく、営業と生産が定期的に情報交換を行う場を設けることが重要です。例えば、S&OP(Sales & Operations Planning)のようなプロセスを導入し、需要予測、生産計画、在庫計画を関連部門が一体となって策定する仕組みは、部門間の連携を促進する上で非常に有効です。

3. 経営層の役割:
経営層は、部門間のサイロ化が経営課題であると明確に認識し、それを打破するための評価制度や共通の目標(KPI)を設定する責任があります。特定の部門の最適化だけを評価するのではなく、全部門が連携して顧客価値を創出した結果を評価する仕組みが、組織文化の変革を後押しします。

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