異業種に学ぶ「プロダクション管理」−エンタメ業界の求人に見る、これからの生産管理の姿

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一見、日本の製造業とは縁遠い海外のエンターテイメント企業の求人情報。しかし、その職務内容を詳しく見ていくと、これからの生産管理や工場運営が目指すべき姿についての、重要な示唆が隠されています。本記事では、この求人情報をもとに、製造業における管理職や技術者に求められる役割の変化について考察します。

はじめに:ゲーム業界の「プロダクション管理」という仕事

先日、インディーゲームのグッズ企画や販売で知られるiam8bit社が、「プロジェクトマネジメント・ディレクター」の求人を公開しました。物理的な製品(ゲームソフトのパッケージ版、サウンドトラック、関連グッズなど)を扱う同社が求める経験として、「プロジェクト管理またはプロダクション管理の経験」が挙げられています。日本の製造業で言えば、「生産管理」や「製造管理」に近い職務と捉えることができるでしょう。

しかし、注目すべきは、その経験が望まれる業界として「マーケティング代理店、体験型イベント、エンターテイメント環境」が挙げられている点です。単にモノを作るだけでなく、それに付随する顧客体験やマーケティング活動までを視野に入れた管理能力が求められていることが伺えます。これは、現代の製造業が直面する課題とも深く関連しています。

「体験価値」を組み込んだものづくりへ

従来の製造業における生産管理は、ご存知の通り、QCD(品質・コスト・納期)の最適化が中心的な役割でした。定められた仕様の製品を、いかに効率よく、安定した品質で、納期通りに製造するかが至上命題であったと言えます。しかし、この求人内容が示唆するのは、生産管理のスコープが「工場の中」だけに留まらない、新しい姿です。

製品そのものの機能や品質だけでなく、製品が顧客の手に渡り、使用されるまでの一連の「体験(エクスペリエンス)」全体を設計し、管理する。例えば、魅力的なパッケージデザイン、開封時の感動、あるいは製品を通じたコミュニティへの参加など、製品の付加価値を高めるあらゆる要素が管理対象となります。これは、単なる「製造」ではなく、より広範な「プロダクション(価値創造のプロセス)」を管理する、という視点への転換を意味しているのです。

プロジェクトマネジメントと生産管理の融合

この職種が「生産管理ディレクター」ではなく、「プロジェクトマネジメント・ディレクター」とされている点も示唆に富んでいます。これは、定常的なライン生産の管理というよりも、新製品の企画・開発から製造、発売に至るまでの一連の流れを一つの「プロジェクト」として捉え、完遂させる能力を重視していることの表れでしょう。

日本の製造業においても、多品種少量生産やマスカスタマイゼーションへの移行が進む中、従来型の生産管理手法だけでは対応が難しくなる場面が増えています。個別の受注案件や新製品の立ち上げを、それぞれ独立したプロジェクトとして管理し、開発、資材調達、製造、品質保証、物流といった各部門を横断的に調整しながら推進するプロジェクトマネジメントのスキルは、今後ますます重要性を増していくと考えられます。

日本の製造業への示唆

今回の異業種の求人情報は、日本の製造業が今後向かうべき方向性について、いくつかのヒントを与えてくれます。

1. 生産管理のスコープ拡大
工場内のQCD管理に留まらず、製品企画やマーケティング部門と連携し、顧客体験(CX)まで含めた価値創造プロセス全体を俯瞰する視点が求められます。自社の生産技術が、最終的な顧客価値にどう貢献できるかを考えることが重要です。

2. プロジェクトマネジメント能力の強化
ルーチンワークの管理だけでなく、部門を横断する複雑な課題を「プロジェクト」として定義し、計画・実行・管理する能力が不可欠となります。特に、現場を率いるリーダー層には、こうしたスキルセットの習得が期待されます。

3. 異業種からの学びと多様な人材活用
エンターテイメント業界のように、顧客の感情や体験をビジネスの中心に据える業界の知見は、製造業が付加価値を高める上で大いに参考になります。自社の常識にとらわれず、他業界の優れた手法を積極的に学ぶ姿勢が、企業の競争力を左右するかもしれません。

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