グローバルなエンジニアリング・製造企業が、米国フロリダ州の一郡を米国本社として選定した事例が報じられました。その決定の背景には、地方自治体による積極的な税制優遇措置がありました。本記事ではこの事例をもとに、製造業の海外進出や国内での設備投資における立地選定の要諦を探ります。
概要:フロリダ州での製造業本社誘致の事例
先日、グローバルに事業を展開するエンジニアリング・製造企業であるField International Group社が、米国本社をフロリダ州エスカンビア郡に設立することを決定しました。海外進出や拠点設立において、立地の選定は事業の成否を左右する極めて重要な経営判断です。今回の決定において、一つの大きな要因となったのが、地域が提供する税制優遇措置でした。
成功の鍵となった税制優遇措置「EDATE」
エスカンビア郡が同社に提示したインセンティブの一つに、「EDATE(Economic Development Ad Valorem Tax Exemption)」と呼ばれる制度があります。これは、経済開発を目的とした企業誘致のために、固定資産税に相当する従価税を最大10年間にわたって免除するというものです。工場や本社屋といった不動産、そして大規模な生産設備を保有する製造業にとって、固定資産税は決して小さくない負担です。特に、操業開始から事業が軌道に乗るまでの期間において、この税負担が免除されることは、キャッシュフローの改善に大きく寄与し、初期投資の回収を早める効果が期待できます。
海外進出における公的支援という視点
このような地方自治体による企業誘致のための優遇措置は、米国では決して珍しいことではありません。州や郡といった各レベルの自治体が、雇用創出や地域経済の活性化を目的として、税制優遇、補助金、インフラ整備支援、人材育成プログラムの提供など、多岐にわたる支援策を用意して企業誘致を競っています。したがって、製造業が海外での生産拠点や開発拠点の設立を検討する際には、市場へのアクセスや労働力の質・コスト、サプライチェーンの利便性といった従来の評価軸に加え、「いかなる公的支援が受けられるか」という視点を持つことが不可欠です。現地の経済開発機関などと密に連携し、利用可能な制度を徹底的に調査・交渉することが、投資効果を最大化する上で重要な実務となります。
日本の製造業への示唆
今回の事例は、日本の製造業にとってもいくつかの重要な示唆を与えてくれます。海外、特に米国への進出を検討している企業にとっては、立地候補地の比較検討において、各州・各郡が提示するインセンティブ・パッケージを詳細に評価することが必須と言えるでしょう。また、この視点は国内での設備投資にも応用が可能です。日本国内でも、国はもちろんのこと、各都道府県や市町村が独自の補助金や税制優遇、立地支援策を用意しています。自社の事業計画と照らし合わせ、これらの公的支援を最大限に活用する戦略的な視点を持つことが、厳しい事業環境下での競争力維持・強化に繋がるものと考えられます。
要点を以下に整理します。
1. 立地選定における評価軸の多様化
従来の市場、労働力、インフラといった評価軸に加え、国や地方自治体が提供する税制優遇や補助金といった公的支援を、重要な評価項目として組み込むべきです。これは、投資コストの削減と収益性の向上に直結します。
2. 徹底した情報収集と交渉
進出を検討する地域の経済開発機関や専門家と連携し、適用可能な支援制度を漏れなく把握することが肝要です。支援内容は交渉によって変わる可能性もあり、積極的な情報収集と働きかけが求められます。
3. 国内投資への視点の応用
海外事例から得られる知見は、国内での工場新設や大規模な設備更新の際にも活かすことができます。自社の投資計画が、国や自治体の産業振興策に合致する場合、手厚い支援を受けられる可能性があります。常にアンテナを高く張り、活用できる制度を見逃さない姿勢が重要です。


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