米国で進むPFAS規制強化:2026年施行の州法が日本の製造業に与える影響

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「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物)に対する規制が、米国各州で急速に進んでいます。特に2026年は多くの州で新たな規制が施行される節目の年となり、米国市場に関わる日本の製造業にとって、サプライチェーン全体での化学物質管理のあり方が問われています。

はじめに:PFAS規制の世界的潮流と米国の動き

PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は、その撥水性、撥油性、耐熱性といった優れた特性から、半導体、自動車部品、繊維、調理器具、包装材など、極めて広範な工業製品に使用されてきました。しかし、環境中での分解が非常に困難で、人体や生態系への蓄積性が懸念されることから、「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれ、世界的に規制を強化する動きが加速しています。欧州のREACH規則などと並行し、米国でも連邦レベルだけでなく、各州が独自に規制を先行させる動きが活発化しています。

2026年が示す、米国各州の規制強化の潮流

米国の特徴は、連邦政府の統一的な規制に先んじて、各州が独自の判断で法規制を進めている点にあります。特に2026年は、多くの州で新たな規制が発効する重要な年となります。その内容は、大きく分けて「特定製品における使用禁止」と「含有情報の報告義務」の二つに分類できます。

コロラド州やメイン州などでは、カーペット、繊維製品、調理器具といった消費者向け製品において、意図的に添加されたPFASの使用を禁止する法律が施行されます。これは、最終製品を製造するメーカーだけでなく、それらに使用されるコーティング剤、樹脂、繊維といった素材や部品を供給する、いわゆる川上のサプライヤーにも直接的な影響を及ぼすものです。

一方、ミネソタ州やニューメキシコ州などでは、製品にPFASが含まれている場合、製造業者に対して当局への報告を義務付ける制度が導入されます。この動きは、自社製品に使用されている化学物質を正確に把握し、その情報をサプライチェーン全体で追跡・管理する体制の構築が不可欠であることを示唆しています。

日本の製造現場における実務的な課題

これらの米国の動きは、米国へ直接製品を輸出している企業だけの問題ではありません。自社が納入した部品が、顧客企業の製品に組み込まれ、最終的に米国市場で販売されるケースは数多く存在します。その場合、サプライチェーンの一員として、顧客企業からPFASの含有に関する情報提供や、非含有証明を求められる可能性が非常に高まります。

現場レベルで直面する課題は多岐にわたります。まず、自社の製品に使用している原材料や副資材のすべてについて、サプライヤーからPFASの含有情報を正確に入手し、一元管理する体制の構築が急務となります。従来のグリーン調達調査などを、より深度化させる必要があるでしょう。次に、PFASが担ってきた性能を代替する物質や技術の探索と評価も重要な課題です。代替材料の性能評価や信頼性確認には、相応の時間とコストを要することを覚悟しなければなりません。そして、こうした対応は、問題が発生してから動くのではなく、製品の設計・開発段階から規制動向を織り込む「コンプライアンス・バイ・デザイン」の考え方が求められます。

日本の製造業への示唆

米国各州で進むPFAS規制は、化学物質管理のあり方そのものに変革を迫るものです。日本の製造業がこの潮流に対応していくためには、以下の点が重要になると考えられます。

1. サプライチェーンの透明性確保と情報管理体制の強化
自社製品だけでなく、仕入れ先の部品や原材料に至るまで、サプライチェーンを遡ってPFASの含有情報を把握する体制が不可欠です。サプライヤーへの調査を徹底し、得られた情報をデータベース化して管理する仕組みを早急に構築することが求められます。

2. 規制情報の継続的な監視と部門横断での対応
米国では州ごとに規制内容、対象製品、施行時期が異なります。自社の事業や製品が関連する地域の最新動向を、品質保証部門や法務部門が中心となって継続的に監視し、開発・製造・調達の各部門と連携して対応策を検討する体制が重要です。

3. 将来を見越した設計・開発プロセスの見直し
今後の規制強化は避けられない潮流です。新製品の開発においては、将来のリスクを低減するため、可能な限りPFASを使用しない「PFASフリー」を基本方針とすることを検討すべきです。これは、環境対応力を企業の新たな競争力へと転換させる好機ともなり得ます。

4. 顧客との連携強化と情報開示への備え
川下の顧客企業から、含有化学物質に関する詳細な情報提供を求められる場面は確実に増加します。迅速かつ正確に情報を提供できる体制を整備しておくことは、顧客との信頼関係を維持し、取引を継続していく上での生命線となります。

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