「空飛ぶクルマ」のJoby社、オハイオ州で第二工場取得 – 量産に向けた製造戦略とは

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電動エアタクシー(eVTOL)を開発する米Joby Aviation社が、米国オハイオ州に第二の製造施設を取得したことを発表しました。これは、将来の量産化に向けた同社の製造戦略とサプライチェーン構築の具体的な一歩を示すものであり、日本の製造業にとっても示唆に富む動きです。

「空飛ぶクルマ」量産化へ、製造拠点を拡張

「空飛ぶクルマ」として知られるeVTOL(電動垂直離着陸機)の開発をリードする米Joby Aviation社は、商用旅客サービス開始に向け、その生産能力を大幅に増強する計画を明らかにしました。その中核となるのが、米国オハイオ州デイトン市で取得された第二の製造施設です。この施設は約46,500平方メートルの広さを持ち、2025年には稼働を開始する予定です。

この新施設は、同社がデイトン国際空港に建設中の初期生産拠点(パイロット生産ライン)を補完する役割を担います。具体的には、航空機のサブシステムや精密加工部品の製造に活用される計画であり、量産体制の基盤を着実に固める動きと見ることができます。

既存施設の活用による、迅速かつ効率的な立ち上げ

今回の発表で注目すべき点の一つは、Joby社が全く新しい工場を建設するのではなく、既存の施設を取得・改修する道を選んだことです。同社の製造オペレーション担当プレジデントは、「既存の建物を活用することで、建設を待つことなく、より迅速に、かつ資本効率よく生産規模を拡大できる」と述べています。

これは、変化の速い新しい市場において、いかに早く生産体制を立ち上げ、市場投入までのリードタイムを短縮するかが重要であるかを示しています。日本の製造業においても、国内外での拠点新設や再編の際には、初期投資の抑制や許認可プロセスの短縮化といった観点から、既存インフラの活用は常に検討すべき有効な選択肢と言えるでしょう。

7割超の部品内製化とサプライチェーン戦略

Joby社の製造戦略のもう一つの柱は、航空機部品の70%以上を内製化するという方針です。これは、新しいカテゴリーの製品であるeVTOLにおいて、品質管理、信頼性の確保、そしてサプライチェーンの強靭性を自社の管理下に置きたいという強い意志の表れと考えられます。

近年の地政学リスクやパンデミックによるサプライチェーンの混乱は、多くの製造業にとって深刻な課題となりました。特に、重要な部品を外部調達に依存するリスクが浮き彫りになりました。Joby社のような垂直統合型の内製化戦略は、こうした不確実性への対応策として、また、製品のコア技術を自社内に蓄積する手段として、改めてその重要性が見直されています。もちろん、すべての部品を内製化することは非効率ですが、何を自社で作り、何をパートナーに委ねるかという戦略的な判断が、企業の競争力を左右します。

航空産業集積地(クラスター)の活用

Joby社が製造拠点としてオハイオ州デイトンを選んだ背景には、この地が「航空発祥の地」として知られ、長年にわたり航空宇宙産業のエコシステムが形成されてきたことがあります。熟練した労働力の確保、サプライヤー網へのアクセス、そしてライト・パターソン空軍基地をはじめとする研究機関との連携など、産業クラスターが持つ利点を最大限に活用する狙いがあります。

また、オハイオ州からの手厚いインセンティブ(財政支援)も、立地決定の大きな後押しとなりました。これは、地域社会と企業が一体となって新しい産業を育成しようとする好例です。日本の製造業が国内で新たな拠点を検討する際にも、単に土地や労働コストだけでなく、その地域が持つ産業集積の強みや、地方自治体との連携可能性を総合的に評価することが、事業の持続的な成功に不可欠です。

日本の製造業への示唆

今回のJoby社の動きは、新しいモビリティ市場の立ち上がりを告げるだけでなく、これからの製造業のあり方についていくつかの重要な示唆を与えてくれます。

  • スピード重視の設備投資: 市場投入までの時間を短縮するため、新規建設だけでなく既存施設の買収・活用も有効な戦略です。特に、変化の速い市場では、この「時間効率」が競争優位に直結します。
  • サプライチェーンの再評価と内製化: サプライチェーンの脆弱性が露呈する中、重要部品の内製化によるリスク管理と品質確保の重要性が高まっています。自社のコア技術を守り、安定供給を実現するための垂直統合戦略を再検討する時期に来ています。
  • 産業エコシステムの活用: 自社単独での成長には限界があります。地域の産業クラスターが持つ人材、技術、サプライヤー網を積極的に活用し、行政とも連携することで、より強固な事業基盤を築くことができます。

eVTOLという全く新しい製品の量産化に挑むJoby社の戦略は、既存の枠組みにとらわれない柔軟な思考と、製造業の原理原則に忠実なアプローチが両立している点で、我々日本の製造業関係者にとっても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

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