EMS大手ペガトロン、米国テキサスに新工場設立へ – サプライチェーン再編の新たな動き

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台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)大手であるペガトロンが、米国テキサス州に新工場を設立する計画が報じられました。米中対立を背景としたグローバルサプライチェーンの再編が、大手EMSの生産拠点戦略にも具体的な影響を及ぼし始めています。

EMS大手ペガトロン、米国テキサス州へ進出

AppleのiPhone組み立てなどを手掛ける主要サプライヤーとして知られる台湾のEMS大手、ペガトロン・テクノロジーズが、米国テキサス州ウィリアムソン郡に新たな製造拠点を設立する計画を進めています。この計画に対し、地元ウィリアムソン郡は成果連動型(performance-based)の税制優遇措置を適用する協定を承認しました。これは、大手電子機器メーカーの生産拠点が、再び米国内に戻りつつあることを示す象徴的な動きと言えます。

サプライチェーン再編と地政学リスクへの対応

この動きの背景には、深刻化する米中間の貿易摩擦や技術覇権争いがあります。これまで多くの企業は、コスト効率を最優先し、中国に生産拠点を集中させてきました。しかし、地政学的な緊張の高まりや、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、サプライチェーンが特定地域に集中することのリスクが浮き彫りになりました。その結果、多くのグローバル企業が「脱中国」や「チャイナ・プラスワン」といった形で、生産拠点の多様化を急いでいます。

特に、ペガトロンの主要顧客であるAppleのような米国企業は、自国政府からの要請やサプライチェーンの強靭化(レジリエンス)を目的として、サプライヤーに対して生産拠点の分散を強く求めていると見られます。米国市場向けの製品を米国内で生産するという「地産地消」の流れは、今後さらに加速する可能性があります。

テキサス州の優位性とインセンティブ

ペガトロンがテキサス州を選んだ理由の一つは、同州がIT・半導体産業の一大集積地となりつつあることが挙げられます。特に州都オースティン周辺は「シリコンヒルズ」とも呼ばれ、サムスン電子やTSMCといった半導体大手が相次いで大規模な工場建設計画を発表しており、関連産業にとって非常に魅力的な立地となっています。

また、今回の報道で注目すべきは「成果連動型の税制協定」です。これは、企業が事前に約束した投資額や雇用創出数などの目標を達成した場合にのみ、税制上の優遇措置を受けられるという仕組みです。自治体側は、企業の約束不履行によるリスクを回避しながら積極的な誘致活動を展開でき、企業側は初期投資の負担を軽減できるという双方に利点のある制度です。海外へ生産拠点を展開する際には、こうした現地のインセンティブ制度を十分に理解し、活用することが重要となります。

日本の製造業への示唆

今回のペガトロンの動きは、日本の製造業関係者にとっても重要な示唆を含んでいます。以下に要点を整理します。

1. サプライチェーンの再評価とリスク分散の加速
EMS大手の具体的な動きは、グローバルな生産体制の転換が本格化していることを示しています。自社のサプライチェーンが特定の国・地域に過度に依存していないか、地政学リスクを織り込んだ上で、拠点の多様化や代替調達先の確保といった戦略を具体的に検討すべき時期に来ています。

2. 顧客起点の生産地選定という新たな潮流
これまではコスト最適化が生産地選定の主要な判断基準でしたが、今後は主要顧客の意向や市場の要求(地産地消、サプライチェーンの透明性など)がより重要な要素となります。特に米国市場を主要なターゲットとする企業は、現地生産の選択肢を真剣に検討する必要があるでしょう。

3. 部品・素材メーカーへの影響
最終製品の組立工場が生産拠点を移管する場合、そこに部材を供給しているサプライヤーも対応を迫られます。顧客の海外拠点に追随して現地での供給体制を構築するのか、あるいは品質や技術力を強みに日本からの輸出を維持するのか、自社の事業戦略に基づいた判断が求められます。

4. 海外進出におけるインセンティブ活用の重要性
海外に新たな生産拠点を設ける際には、人件費や物流コストといった традиショナルな要素に加え、各国・各地域の政府や自治体が提供する税制優遇措置や補助金といったインセンティブ制度の活用が、投資の成否を分ける重要な鍵となります。現地の制度に関する詳細な情報収集と交渉が不可欠です。

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