欧州を拠点とする印刷業界団体FESPAが、コロンビアの業界団体を新たにメンバーとして迎え入れ、グローバルなネットワークを拡大しました。この動きの背景には、単なる組織拡大だけでなく、プロセス効率や品質管理における「国際標準」の活用を推進する狙いがあり、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。
グローバルな連携と標準化の潮流
スクリーン印刷やデジタル印刷の分野で世界的な連合体であるFESPAは、このたびコロンビアのグラフィックコミュニケーション産業協会(ASOINGRAF)を新たなメンバーとして迎えました。これにより、FESPAのネットワークは世界40の協会にまで拡大したことになります。注目すべきは、この提携が単なる会員数の増加を目的とするものではなく、加盟団体とその会員企業に対し、国際的に認知された標準規格の活用を促進する点にあります。具体的には、「プロセス効率」「色彩管理」「生産管理」といった、製造業の根幹をなす領域での標準化が掲げられています。
なぜ今、国際標準が重要なのか
グローバルなサプライチェーンが複雑に絡み合う現代において、国際標準への準拠は取引の前提条件となる場面が増えています。今回のFESPAの動きは、こうした潮流を改めて示すものと言えるでしょう。
プロセス効率: 製造工程における国際標準の導入は、作業手順を標準化し、属人性を排除することに繋がります。これにより、生産性の向上や品質の安定化はもちろん、海外拠点や協力工場との連携を円滑にし、サプライチェーン全体の効率化に貢献します。日本の製造現場が得意とする「カイゼン」活動も、その成果を客観的な指標で示す上で、標準化は有効な手段となります。
色彩管理: 印刷業界に限らず、自動車の塗装、樹脂成形品、繊維製品など、色が重要な品質要素となる製品は数多く存在します。サプライヤーと顧客、あるいは生産拠点間で色基準が異なれば、手戻りやクレームの原因となりかねません。国際的な色彩基準に準拠することは、こうした問題を未然に防ぎ、グローバルな品質保証体制を構築する上で不可欠です。
生産管理: 在庫管理、納期管理、品質保証システムなど、生産管理手法にもISO 9001をはじめとする国際規格が存在します。これらの規格に準拠した管理体制を構築することは、顧客からの信頼を獲得し、国際的な取引を有利に進めるための重要な要素となります。
日本の現場力と標準化の融合
日本の製造業は、長年にわたり、現場の知恵と工夫によって高い品質と生産性を実現してきました。しかし、その強みが時として「暗黙知」や特定の熟練技能者に依存する形になっていることも少なくありません。グローバル競争が激化し、技術継承が課題となる中で、こうした現場の優れたノウハウを国際標準という「形式知」に落とし込み、客観的で普遍的な強みへと転換していく視点が求められています。国際標準は、決して現場の創意工夫を縛るものではなく、むしろその価値を世界に示すための共通言語として機能するのです。
日本の製造業への示唆
今回の印刷業界の動向は、業種を問わず、日本の製造業全体にとって重要な視点を提供しています。以下に、実務への示唆を整理します。
1. グローバル市場における「共通言語」の認識:
国際標準(ISO規格など)は、品質やプロセスを客観的に示すための世界共通の言語です。自社の技術力や品質管理体制をグローバル市場でアピールし、信頼を獲得するために、国際標準への準拠はますます重要になります。
2. サプライチェーン全体での標準化推進:
自社だけでなく、サプライヤーに対しても国際標準への準拠を求めることで、サプライチェーン全体での品質安定化と効率化が期待できます。これは、調達リスクの低減にも繋がります。
3. 「現場の強み」の形式知化:
自社の製造現場で培われてきた独自のノウハウや優れた管理手法を、国際標準のフレームワークに照らし合わせて見直すことが推奨されます。これにより、強みを可視化し、組織的な知識として継承・展開することが可能になります。
特定の業界団体における国際連携のニュースは、一見すると自社とは無関係に見えるかもしれません。しかし、その背景にある「標準化による競争力強化」という本質的なテーマは、すべての製造業が向き合うべき普遍的な課題であると言えるでしょう。


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