中国、「製造強国」への歩みを国家事業として展示 ― その狙いと日本の製造業が見るべき点

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中国国家博物館で、同国の製造業の発展を示す大規模な展覧会が開催されています。本稿では、その展示内容から中国の国家戦略を読み解き、日本の製造業関係者にとっての実務的な意味合いを考察します。

国家戦略を可視化する大規模展覧会

中国の北京にある国家博物館で、同国の製造業の歩み、特に過去10年間の成果をまとめた大規模な展覧会が開催されています。会場には、大型旅客機C919、国産初の大型クルーズ船「愛達・魔都号(アドラ・マジックシティ)」、高速鉄道「復興号」といった国家的なプロジェクトの巨大模型が並び、中国が「製造強国」へと突き進む姿を国内外に示しています。

この展覧会は、単なる技術や製品の展示会ではありません。習近平国家主席が掲げる「製造強国」戦略の重要性を国民に伝え、その成果を誇示するという政治的な意味合いが強いものと見てよいでしょう。これは、製造業の高度化が中国にとって最重要の国家目標の一つであることを改めて示しています。

展覧会が示す中国製造業の重点領域

展覧会の構成は、中国が製造業の発展において何を重視しているかを明確に示唆しています。展示は大きく3つのセクションに分かれており、「発展の基礎と方向性」「発展の成果」「未来への展望」という流れで構成されています。

特に注目すべきは、「発展の成果」として具体的に挙げられている製品群です。航空宇宙、高速鉄道、大型船舶といった分野は、いずれも極めて高度な技術のすり合わせと、強靭なサプライチェーンを必要とする総合的な工業製品です。かつて「世界の工場」として安価な労働力を提供してきた中国が、今やこうした高付加価値な製品群の国産化に国を挙げて取り組んでいる現実を、我々は冷静に認識する必要があります。

また、「未来への展望」としてインテリジェント製造(スマートファクトリー)やグリーン製造(環境対応型製造)が掲げられている点も重要です。これらは日本の製造業にとっても喫緊の課題であり、中国も同様の課題認識のもと、国家レベルで技術開発と導入を強力に推進していることがうかがえます。

技術導入から国産化、そして独自のサプライチェーン構築へ

展示されているC919や高速鉄道は、開発当初は海外からの技術導入に大きく依存していました。しかし、中国は着実に国産化率を高め、基幹部品の内製化や国内サプライヤーの育成を進めています。これは、単に製品を組み立てるだけでなく、その製品を生み出すための産業基盤、すなわち独自のサプライチェーンそのものを構築しようという強い意志の表れです。

日本の製造業、特に優れた要素技術や高品質な部品・素材を提供する企業にとって、この動きは二つの側面を持っています。一つは、中国企業が内製化を進めることによる既存ビジネス喪失のリスクです。もう一つは、高度化する中国の製造業に対して、より付加価値の高い技術や部品を供給するという新たな事業機会の可能性です。自社の技術や製品が、この大きな潮流の中でどのような位置づけにあるのか、客観的な分析が求められます。

日本の製造業への示唆

今回の展覧会は、中国の製造業の現在地と未来の方向性を理解する上で、多くの示唆を与えてくれます。我々日本の製造業関係者は、以下の点を踏まえ、自社の戦略を再考する必要があるでしょう。

1. 中国を「技術的競合相手」として直視する
中国はもはや単なるコスト競争の相手ではありません。航空宇宙や新エネルギー車(NEV)といった特定の分野では、国家的な支援を背景に急速に技術力を高め、世界市場における有力な競合相手となりつつあります。この現実を前提とした事業戦略の立案が不可欠です。

2. サプライチェーンの再評価と強靭化
中国の国産化推進の動きは、我々のサプライチェーンに直接的な影響を及ぼします。自社製品における中国製部品への依存度を再評価するとともに、地政学的なリスクも踏まえ、サプライチェーンの多元化や強靭化を継続的に進める必要があります。

3. 「非価格競争力」の更なる追求
中国企業が規模とスピードで追随する中、日本の製造業が優位性を保つためには、品質、信頼性、耐久性といった従来の強みに加え、環境性能や顧客への密着した技術サポートといった「非価格競争力」を一層磨き上げることが重要になります。単に良いものを作るだけでなく、その価値を顧客に的確に伝え、適正な価格で提供する力が問われます。

4. 変化の中の事業機会の探索
中国市場の高度化は、脅威であると同時に新たな事業機会も生み出します。例えば、高度な生産設備、精密な検査機器、高品質な素材、あるいは工場の自動化や環境対応に関するソリューションなど、日本の技術力が活かせる領域は依然として存在します。市場の変化を的確に捉え、新たな価値提供の可能性を模索する視点が重要です。

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