モロッコの農業に学ぶ、資源制約下における生産性向上の要諦

global

北アフリカ、モロッコのブルーベリー生産が、水不足という厳しい制約の中で高い収量を達成しています。この一見、製造業とは無関係に見える事例から、日本のものづくりが直面する課題解決のヒントを読み解きます。

はじめに:異業種から学ぶ視点

海外の農業に関するニュースが、日本の製造業にとって示唆に富むことがあります。今回取り上げるのは、モロッコにおけるブルーベリー生産の事例です。水不足という深刻な課題を抱える地域で、いかにして高い生産性を実現しているのか。その取り組みは、エネルギー価格の高騰、労働力不足、環境規制といった様々な制約に直面する日本の製造現場にも通じる、普遍的な原則を含んでいます。

モロッコ農業が示す「制約を乗り越える力」

報じられているところによると、モロッコのブルーベリー農園では、1ヘクタールあたり18トンを超える高い収量を達成しているとのことです。この成功の背景には、大きく分けて二つの重要な要素があると考えられます。一つは「灌漑効率の追求」、もう一つは「遺伝的選抜(品種改良)」です。水が豊富ではないという事業環境が、水という資源をいかに効率的に利用するかの技術革新を促し、同時に、そもそも水をあまり必要とせず、かつ収量の多い品種を選び抜くという努力につながっているのです。

製造業における「灌漑効率」と「品種改良」

この二つの要素を、私たち製造業の現場に置き換えてみましょう。これは、生産性向上における普遍的なアプローチそのものと言えます。

まず「灌漑効率の追求」とは、製造業における「資源利用効率の最大化」に相当します。水は、電気、ガス、原材料、そして労働力といった、工場で投入されるあらゆる資源と読み替えることができます。省エネルギー設備の導入による電力使用量の削減、歩留まり改善活動による材料ロスの低減、自動化やロボット活用による工数の削減など、インプットを最小限に抑え、アウトプットを最大化しようとする日々の改善活動がこれにあたります。

次に「遺伝的選抜(品種改良)」は、「製品設計やプロセス設計の最適化」と考えることができます。生産現場での改善努力(灌漑効率)には限界があります。そもそも造りにくい製品、不良が出やすい工程では、いくら現場で工夫を重ねても、効果は限定的です。より少ない部品点数で済む製品設計(Design for Manufacturability)、安定した品質を確保できる工程設計、より少ないエネルギーで加工できる材料の選定など、源流段階での作り込みが、生産性全体を大きく左右するのです。

データ活用による精密な管理の重要性

モロッコの事例で高い灌漑効率を実現できている背景には、おそらく土壌センサーや気象データに基づいた、精密な水管理技術の存在が推察されます。必要な場所に、必要な時に、必要な量だけ水を供給する。これは、製造業におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の考え方と軌を一つにするものです。IoTセンサーで設備の稼働状況やエネルギー消費量をリアルタイムに監視し、データ分析に基づいて最適な生産条件を見出す。あるいは、熟練者の勘や経験をデジタルデータとして形式知化し、誰もが高品質なものづくりを再現できるようにする。データに基づいた客観的で精密な管理こそが、資源効率を飛躍的に高める鍵となります。

日本の製造業への示唆

このモロッコの事例から、日本の製造業が改めて認識すべき要点を以下に整理します。

1. 制約は革新の機会であること
人手不足やエネルギー価格の上昇といった外部環境の制約は、決して悲観すべきことばかりではありません。むしろ、旧来の非効率な生産方式を見直し、自動化や省人化、エネルギー効率の改善といった本質的な改革を進める好機と捉えるべきです。

2. 源流管理と工程改善は両輪で推進すること
日々の現場改善(灌漑効率)は極めて重要ですが、それと同時に、設計開発部門と連携し、製造しやすい製品・プロセス設計(品種改良)を追求する視点が不可欠です。両者は車の両輪であり、一体となって初めて持続的な生産性向上が可能になります。

3. データに基づいた精密な工場運営への移行
経験や勘に頼った管理から脱却し、各種センサーやIoT技術を活用して得られる客観的なデータに基づいて意思決定を行う文化を醸成することが求められます。資源の投入から加工、検査に至るまで、あらゆるプロセスをデータで可視化し、最適化を図ることが、これからの時代の工場運営の基本となるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました