グローバル企業の連携に学ぶ、持続可能な原料調達とバリューチェーンの深化

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米国の穀物大手ADMとドイツの化学大手Bayerが、インドで大規模な農業支援の連携を拡大しました。この動きは、単なる原料調達に留まらず、サプライチェーンの上流から環境や社会課題に取り組むものであり、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。

グローバル大手2社による食品バリューチェーン強化の動き

米国の穀物メジャーであるADM社と、ドイツの化学・農業科学大手Bayer社は、インドのマハーラーシュトラ州において、大豆農家を対象とした協力関係を大幅に拡大することを発表しました。この取り組みは、対象となる農家の数を4倍の10万人にまで広げるという大規模なものです。

この連携は、単に農家から原料を買い付けるという従来の取引関係とは一線を画します。生産段階から深く関与し、技術指導や持続可能な農法の導入を支援することで、食品のバリューチェーン全体の競争力と持続可能性を高めることを目指す、極めて戦略的な動きと捉えることができます。

環境と安全性を両立させる生産プログラム

報道によれば、両社が提供する支援プログラムには、具体的な生産管理手法が含まれています。その中核となるのが、「生産(Production)」と「保護(Protection)」に関する指針です。

特に注目すべきは、「保護」プログラムにおける「収穫前休薬期間(pre-harvest intervals)」と「生物多様性の保護(biodiversity protection)」の重視です。収穫前休薬期間の遵守は、農薬の残留を防ぎ、最終製品の安全性を確保する上で不可欠な管理項目です。また、生物多様性への配慮は、土壌の健康を維持し、長期的に安定した農業生産を可能にするための基盤となります。

日本の製造業、とりわけ食品や化学業界の品質管理担当者にとって、これらは決して目新しい概念ではありません。しかし、サプライチェーンの最上流である原料生産地において、これほど大規模に、かつ体系的に管理・指導を行っている点は、学ぶべき点が多いと言えるでしょう。これは、企業の社会的責任(CSR)やESG経営の観点からも、調達活動における重要な取り組みです。

サプライチェーン上流への関与がもたらす価値

ADMとBayerの連携は、川下のメーカーや商社が、川上の生産者といかにしてパートナーシップを築くべきかを示唆しています。農家に対して一方的に基準を課すのではなく、生産性向上や持続可能な農法に関する知見を提供することで、共に価値を創造する関係性を目指しているのです。

このような川上への深い関与は、企業にとって複数のメリットをもたらします。第一に、高品質な原料の安定確保です。第二に、環境負荷の低い生産方法の導入による、サステナビリティ目標への貢献。そして第三に、生産履歴の透明性を高めることによる、トレーサビリティの向上です。これらはすべて、企業の事業継続計画(BCP)と競争力強化に直結する重要な要素です。

日本の製造業への示唆

今回の事例から、日本の製造業が実務に取り入れるべき視点を以下に整理します。

第一に、サプライチェーンの可視化と上流への関与です。自社が使用する原材料が、どこで、どのように生産されているかを把握し、必要に応じて生産プロセスにまで踏み込んで関与していく姿勢が求められます。これはリスク管理であると同時に、品質向上の機会でもあります。

第二に、持続可能性(サステナビリティ)を事業戦略の中核に据えることです。環境や生物多様性への配慮は、もはやコストやCSR活動という側面だけでは語れません。製品の付加価値、ブランドイメージ、そして何よりも事業の持続性を左右する経営課題として捉え、調達戦略に具体的に組み込む必要があります。

最後に、パートナーシップによる課題解決です。ADM(穀物商社)とBayer(農業科学)のように、異なる強みを持つ企業が連携することで、単独では解決が難しい複雑な課題に取り組むことが可能になります。自社の枠を超え、サプライヤーや時には競合他社とも連携し、業界全体の課題解決を目指す視点が、今後の成長の鍵となるでしょう。

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