独化学大手のバイエルと米穀物メジャーのADMが、インドにおける持続可能な大豆生産者支援プログラムを拡大すると発表しました。この動きは、グローバル企業がサプライチェーンの最上流である原料調達段階から、サステナビリティ確保に直接関与する潮流を象-徴しています。
概要:グローバル企業による農業支援プログラムの拡大
独化学大手のバイエル社と米穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社(ADM)は、インドのマハラシュトラ州で展開している大豆農家向けの共同支援プログラムを、対象者10万人にまで拡大することを発表しました。この取り組みは、両社がサプライチェーンの起点となる農産物の持続可能性を確保し、地域社会に貢献することを目的としています。
プログラムの核心:第三者基準に基づく持続可能な農業
本プログラムの特徴は、単なる収穫量増加を目的とした技術支援にとどまらない点にあります。具体的には、非営利組織であるProTerra財団が定める持続可能性のフレームワークを基準として採用しています。この基準には、効率的な生産管理手法だけでなく、水資源の保全、土壌の健全性維持、生物多様性への配慮といった環境側面や、労働者の権利保護といった社会側面も含まれています。第三者による客観的な基準を用いることで、取り組みの実効性と透明性を高める狙いがあると考えられます。
背景にあるグローバル・サプライチェーンの変化
このような動きの背景には、自社の事業活動だけでなく、サプライチェーン全体における環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮を求める社会的な要請の高まりがあります。消費者や投資家は、製品がどこで、どのように作られたのかを重視するようになり、企業には原料調達から廃棄に至るまでのトレーサビリティと責任が問われるようになりました。特に、農産物や天然資源を扱う企業にとって、サプライチェーンの最上流である「川上」の農家や生産者との連携は、事業継続性の観点からも不可欠な要素となっています。
日本の製造業への示唆
今回のバイエルとADMの事例は、日本の製造業、特に農産物や天然素材を原料とする食品・化学・素材メーカーなどにとって、重要な示唆を与えています。
1. サプライチェーンの可視化と上流への関与の重要性
自社の直接の取引先(Tier1サプライヤー)の管理だけでなく、その先の原料生産者にまで遡って状況を把握し、必要に応じて直接関与していく姿勢が求められます。これは、品質リスクの低減だけでなく、人権や環境といった非財務リスクに対応し、企業の社会的責任を果たす上でも不可欠です。
2. 「サステナビリティ」を調達戦略の中核に
持続可能性への配慮は、もはやCSR活動の一環ではなく、安定した原料調達を担保し、企業価値を向上させるための経営戦略そのものです。従来のQCD(品質・コスト・納期)に、E(環境)やS(社会)といった軸を加え、調達方針を再構築することが必要になるでしょう。
3. 協業と国際基準の活用
サプライチェーン全体にわたる課題解決は、一社単独では困難です。今回の事例のように、業界の他社や専門的な知見を持つNPO/NGO、認証機関などと連携することが有効な手段となります。また、ProTerraのような国際的な認証や基準を活用することは、自社の取り組みの客観性を担保し、グローバル市場での信頼性を高める上で役立ちます。


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