中国、今後10年で「ハイテク製造大国」の地位を確立か ― 中国研究機関の報告書が示す未来図

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中国の政府系研究機関が、同国が今後10年でハイテク分野における製造大国としての地位を確固たるものにするとの分析を発表しました。この報告は、日本の製造業にとって、今後の事業環境や競争戦略を考える上で重要な示唆を含んでいます。

中国独自の指標で示された製造業の成長

中国工程院などの研究機関は、「製造力指数(manufacturing power index)」と呼ばれる独自の指標を用いて、世界の主要国の製造業の実力を評価しています。このほど発表された報告書によれば、中国はこの指数において着実にスコアを伸ばしており、米国に次ぐ第2グループの上位に位置しているとされています。この指数は、単なる生産規模だけでなく、品質、産業構造の高度化、持続可能性といった複数の側面から製造業の「強さ」を総合的に評価するものです。

かつての「世界の工場」として、主に量の面で世界をリードしてきた中国ですが、その戦略の軸足が「製造大国」から「製造強国」へと明確に移行していることが、こうした報告からも見て取れます。特に、政府主導で推進されるハイテク分野での躍進は目覚ましく、2035年までには製造強国グループの中核を担うという目標が掲げられています。

ハイテク分野への重点投資とその成果

報告書が特に注目しているのは、電気自動車(EV)、新エネルギー、次世代通信、航空宇宙といったハイテク分野です。これらの分野では、中国はすでに世界市場で大きな存在感を示しており、今後10年でその地位はさらに強固なものになると予測されています。これは、長年にわたる巨額の研究開発投資と、国内の巨大市場を背景としたサプライチェーン全体の高度化が結実しつつあることを示唆しています。

日本の製造業の現場から見ても、中国企業の品質や技術レベルの向上は肌で感じるところでしょう。かつては「安かろう悪かろう」といったイメージもありましたが、現在ではスマートフォンやドローン、産業用ロボットなど、多くの分野で日本企業と互角以上に渡り合う製品が生まれています。現地の工場では自動化やデジタル化が急速に進み、生産管理や品質管理のレベルも著しく向上しているのが実情です。

変化する中国との向き合い方

この動向は、日本の製造業にとって単なる脅威ではありません。中国がハイテク製造業の集積地となることで、高性能な部品や素材、高度な製造装置に対する需要もまた増大します。日本の企業が持つ独自の技術やノウハウは、こうした高度なサプライチェーンの中で、代替の難しい重要な役割を担う可能性を秘めています。

一方で、汎用的な製品や技術領域においては、中国企業との厳しい競争は避けられません。自社の製品や技術が、グローバルな競争環境の中でどのような位置づけにあるのか、その競争力の源泉はどこにあるのかを冷静に見極め、事業ポートフォリオを再構築していく必要があります。サプライチェーンにおいても、地政学的なリスクを考慮した「チャイナ・プラスワン」の発想だけでなく、中国の高度な産業基盤をいかに戦略的に活用するかという視点が求められます。

日本の製造業への示唆

今回の報告書は、我々日本の製造業関係者に以下の点を再認識させるものです。

1. 中国製造業の実力の客観的評価:
中国の製造業を、単なる低コストの生産拠点としてではなく、技術力を持つ競合相手、あるいは高度なパートナーとして客観的に評価し直す必要があります。特にハイテク分野における彼らの進化のスピードを過小評価すべきではありません。

2. サプライチェーン戦略の複線化:
特定国への過度な依存を避けるリスク管理は当然として、中国の高度化したサプライチェーンを戦略的に活用する道も探るべきです。高品質な部材の調達先や、巨大市場への供給拠点として、中国との関わり方を再定義する時期に来ています。

3. 自社の強みの再定義と集中:
価格競争に陥りやすい分野から、日本ならではの「すり合わせ技術」や「匠の技」、あるいは特定の素材や精密加工技術といった、模倣が困難な領域へと事業の軸足を移していくことが重要です。自社のコアコンピタンスは何かを問い直し、そこに経営資源を集中させることが求められます。

4. 技術開発と人材育成の加速:
中国の猛追を振り切るためには、継続的な研究開発投資と、変化に対応できる技術者や現場リーダーの育成が不可欠です。デジタル技術の活用はもちろんのこと、ものづくりの本質である現場力を絶えず磨き続ける地道な努力が、将来の競争力を左右します。

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