ベトナムにおける生産・管理の高度化 ― DX・GX推進と品質認証の動向

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ベトナムでは現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)を国家戦略として推進する動きが加速しています。特に農業分野では、具体的な品質認証の取得目標が掲げられており、この動向は日本の製造業のサプライチェーンにも影響を及ぼす可能性があります。

ベトナムにおけるDX・GX推進の潮流

近年、ベトナム政府は産業の高度化を目指し、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)、そしてイノベーションを促す起業家精神の育成を強力に推進しています。この動きは、IT産業や製造業だけでなく、農業をはじめとする第一次産業にも及んでおり、国全体の生産性および管理レベルの向上を目的としています。

特に注目されるのは、単なるスローガンに留まらず、具体的な数値目標や認証制度の活用を通じて、現場レベルでの変革を促そうとしている点です。これは、生産、管理、そして事業運営全体の近代化を目指すという、ベトナムの強い意志の表れと捉えることができます。

農業分野での具体的な目標と品質認証

この国家戦略の一環として、農業分野では具体的な目標が設定されています。例えば、ハイテク技術を導入した農業協同組合の少なくとも60%が、「VietGAP」「オーガニック」「OCOP」といった認証を取得することを目指すとしています。

ここで挙げられている認証について、日本の実務者向けに補足します。「VietGAP(Vietnamese Good Agricultural Practices)」は、ベトナムにおける適正農業規範であり、食品安全、労働者の安全、環境保全などを定めた生産管理基準です。また、「OCOP(One Commune One Product)」は、日本の「一村一品運動」をモデルとしたプログラムで、各地域の特産品の品質向上とブランド化を支援するものです。

これらの認証取得を目標に掲げることは、生産プロセスの標準化、トレーサビリティの確保、そして品質管理レベルの底上げに直結します。これまで曖昧であった現地の生産管理状況が、客観的な基準によって可視化されるようになる点で、非常に重要な動きと言えるでしょう。

日本の製造業のサプライチェーンへの影響

こうしたベトナムの動向は、同国から原材料を調達したり、現地に生産拠点を構えたりしている日本の製造業にとって、無視できない変化をもたらします。農産品に限らず、他の産業分野にも同様の品質・管理基準の標準化が進む可能性は十分に考えられます。

ポジティブな側面としては、調達する原材料や部品の品質安定性、安全性の向上が期待できます。サプライヤーがVietGAPのような認証を取得していれば、その生産工程がある一定の基準を満たしていることの証明となり、調達先評価の信頼性が高まります。

一方で、サプライヤー選定の基準を見直す必要も出てくるでしょう。今後は、価格や納期だけでなく、DX・GXへの対応状況や、各種認証の取得有無が、サプライヤーを評価する上での重要な指標となる可能性があります。現地のパートナー企業と共に、こうした新しい基準への対応を進めていく視点が求められます。

日本の製造業への示唆

今回のベトナムの動向から、我々日本の製造業は以下の点を実務的な示唆として捉えるべきでしょう。

1. サプライチェーンにおける品質基準の変化:
ベトナムをはじめとするアジア諸国では、国策として品質管理や環境基準の高度化が進んでいます。調達先の評価基準に、こうした現地の認証制度やDX・GXへの取り組みを組み込むことが、サプライチェーンのリスク管理上、ますます重要になります。

2. 現地サプライヤーとの連携強化:
現地のサプライヤーが新たな基準へ対応する過程では、日本の製造業が持つ生産管理や品質管理のノウハウが役立つ可能性があります。技術指導や共同での改善活動を通じて、サプライヤーの育成とパートナーシップの強化を図ることは、自社のサプライチェーン強靭化に直結します。

3. 新たな事業機会の模索:
現地のDX・GX化は、新たな事業機会をもたらす可能性も秘めています。日本の優れた生産技術、環境技術、管理システムなどを、現地のニーズに合わせて提供することも考えられるでしょう。現地の産業構造の変化を注意深く見守り、先を見越した戦略を立てることが肝要です。

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