米国、政府調達から中国製輸送機器を排除へ ― 国内製造業の保護強化とサプライチェーンへの影響

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米上院で、連邦政府の資金を用いた中国製のバスや鉄道車両の購入を禁止する法案が超党派で支持されています。この動きは、米国内の製造業と雇用を守ると同時に、経済安全保障の観点からサプライチェーンの見直しを迫るものであり、日本の製造業にとっても決して対岸の火事ではありません。

米国内製造業を支援する新法案の動き

米アリゾナ州選出のルーベン・ガジェゴ上院議員は、米国内の製造業と雇用を支援するため、政府調達に関する現行法の抜け穴をふさぐ超党派の法案を支持すると発表しました。この法案の核心は、連邦政府の資金が中国政府の支援を受ける企業が製造したバスや鉄道車両の購入に充てられることを阻止する点にあります。表向きは米国の納税者の資金を国内産業の育成に使うという、いわゆる「バイ・アメリカン」政策の強化ですが、その背景にはより複雑な意図が隠されています。

経済安全保障という大きな文脈

この法案は、単なる国内産業保護政策としてだけでなく、米中間の技術覇権争いや経済安全保障という大きな文脈の中で捉える必要があります。特に、公共交通システムなどの重要インフラに用いられる製品について、特定の国、とりわけ中国への依存度が高まることへの警戒感が米国内で強まっています。製品に組み込まれたソフトウェアや通信機器が、将来的に安全保障上のリスクになり得るとの懸念が、こうした政策を後押ししていると考えられます。我々日本の製造業としても、自社製品が関わるインフラの性質や、納入先国の安全保障政策をより深く理解する必要性が増していると言えるでしょう。

サプライチェーンへの影響と現地化圧力

今回の法案が直接対象とするのはバスや鉄道車両ですが、この種の保護主義的な動きは他の産業分野にも波及する可能性があります。米国市場で事業を展開する企業にとっては、部品調達から最終組立まで、サプライチェーン全体における「米国産」比率を高めることへの圧力が一層強まることが予想されます。これは、日本から基幹部品を輸出し、現地で最終組立を行うといった従来のビジネスモデルの見直しを迫る可能性があります。サプライチェーンの透明性を確保し、原産地証明などの要求に的確に対応できる体制を構築することが、今後の重要な経営課題となります。

日本の製造業への示唆

今回の米国の法案提出は、日本の製造業にいくつかの重要な示唆を与えています。自社の事業環境と照らし合わせ、今後の戦略を検討することが求められます。

1. 各国の保護主義的政策の動向把握:
米国に限らず、欧州や他の主要国でも、経済安全保障を名目とした国内産業の保護や特定国製品の排除といった動きが加速する可能性があります。各国の政策動向や法規制の変更を継続的に監視し、迅速に対応できる情報収集体制が不可欠です。

2. サプライチェーンの脆弱性評価と強靭化:
自社のサプライチェーンにおいて、地政学リスクの高い国・地域への依存度を改めて評価する必要があります。単にコストや品質だけでなく、カントリーリスクを織り込んだ調達戦略が求められます。代替調達先の確保や生産拠点の分散化(フレンドショアリングなど)を具体的に検討する時期に来ています。

3. 「市場内生産(メイド・イン・マーケット)」の再評価:
主要な販売市場での生産体制を強化することの戦略的意義がますます高まっています。これは関税対策だけでなく、今回のような非関税障壁や調達規制を乗り越えるための有効な手段となります。現地での部品供給網の構築も含めた、より深いレベルでの現地化が競争優位につながるでしょう。

4. 新たな事業機会の探索:
一方で、こうした保護主義的な政策は、当該国に生産拠点を有する企業にとっては新たな事業機会をもたらす可能性もあります。競合となる中国企業が市場から締め出されることで生じる空白を、品質と信頼性で埋めることができれば、大きなビジネスチャンスに繋がります。現地のニーズや規制に適合した製品開発・供給体制を構築することが鍵となります。

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