英国の事例に学ぶ、これからのサプライチェーン評価軸 – Logistics UKアワードが示す潮流

Global製造業コラム

英国の物流業界団体「Logistics UK」が、優れたサプライチェーンの取り組みを表彰するアワードを開催しました。この動きは、単なるコストや効率だけでなく、持続可能性や強靭性といった新たな価値基準が重要視されていることを示唆しています。日本の製造業が今後、サプライチェーンをいかに構築し、評価していくべきかのヒントを探ります。

英国におけるサプライチェーンの表彰事例

英国の主要な物流業界団体である「Logistics UK」が、過去一年間で最も優れた功績をあげた企業や取り組みを表彰するアワードを開催したことが報じられました。この記事によれば、道路輸送をはじめとするサプライチェーンの様々な分野から、多くの優れた応募があったとのことです。このようなアワードは、単に個社の功績を称えるだけでなく、業界全体でベストプラクティスを共有し、サプライチェーンのレベルを底上げする目的も持っています。特に欧州では、環境規制や労働環境改善への意識が高く、そうした観点からの先進的な取り組みが評価される傾向にあります。

評価される取り組みから見るサプライチェーンの潮流

具体的な受賞内容は元記事では詳述されていませんが、近年の世界的な潮流から、どのような取り組みが評価の対象となるかは推察できます。それは、従来の「コスト・品質・納期(QCD)」という指標に加え、新たな評価軸が加わってきていることを意味します。具体的には、以下の4つの領域が注目されていると考えられます。

1. 持続可能性(サステナビリティ): CO2排出量削減に向けたEVトラックの導入、鉄道や船舶輸送へのモーダルシフト、梱包材の削減やリサイクル、サプライチェーン全体での廃棄物削減など、環境負荷低減への具体的な貢献が問われます。

2. 強靭性(レジリエンス): 地政学リスク、自然災害、パンデミックといった不測の事態に備え、サプライチェーンをいかに途絶させないかという視点です。供給元の多様化、重要部材の在庫レベル見直し、事業継続計画(BCP)の高度化などが評価されるでしょう。

3. デジタルトランスフォーメーション(DX): AIを活用した需要予測や輸送ルートの最適化、倉庫内作業の自動化、ブロックチェーン技術によるトレーサビリティの確保など、データとデジタル技術を駆使した効率化と高度化への取り組みです。

4. 人材育成と労働環境: 多くの国で課題となっているドライバーや倉庫作業員の不足に対し、働きがいのある職場環境の提供、安全対策の徹底、スキルアップを支援する教育プログラムといった、人に焦点を当てた活動も重要な評価項目です。

日本の製造業におけるサプライチェーンの現在地

これらの潮流は、日本の製造業にとっても決して他人事ではありません。特に、いわゆる「2024年問題」に直面する我が国では、物流の維持・効率化は喫緊の経営課題です。これまでの日本では、荷主である製造業が強い立場から物流コストの削減を追求する傾向が見られましたが、その構造が限界に来ていることは明らかです。今後は、物流パートナーと対等な立場で連携し、サプライチェーン全体の最適化を目指す姿勢が不可欠となります。単に委託費用を叩くのではなく、物流事業者の労働環境改善に協力したり、荷待ち時間を削減するために工場の受け入れ体制を見直したりといった、荷主側の主体的な取り組みが求められています。

日本の製造業への示唆

今回の英国の事例から、日本の製造業関係者は以下の点を実務への示唆として捉えることができるでしょう。

  • サプライチェーンの評価軸の再定義: 自社のサプライチェーンを評価する際、コストや納期だけでなく、「環境負荷」「安定供給リスク」「パートナーとの協力関係」といった多面的な視点を取り入れる必要があります。これらの非財務的な価値が、中長期的な企業競争力に直結する時代になっています。
  • パートナーシップの深化: 物流事業者やサプライヤーを単なる「業者」として扱うのではなく、共に課題を解決する「パートナー」として認識を改めることが重要です。定期的な情報交換の場を設け、共同で改善活動に取り組むことで、より強靭で持続可能なサプライチェーンが構築できます。
  • 自社の取り組みの可視化と発信: サプライチェーン改善に向けた自社の取り組みを、客観的なデータと共に社内外へ積極的に発信することも有効です。優れた取り組みは、顧客からの信頼獲得や、ESG投資を重視する投資家からの評価にも繋がります。社内の意識向上にも寄与するでしょう。
  • 海外事例からの継続的な学習: 欧州をはじめとする海外では、環境規制や労働問題への対応が日本より数歩進んでいるケースが少なくありません。今回のような海外の表彰事例などを参考に、自社に取り入れられる先進的なアイデアや技術を常に模索する姿勢が求められます。

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