CESで「製造技術」が主役に – サプライチェーン再編と技術革新が促す新たな潮流

Global製造業コラム

世界最大級のテクノロジー見本市であるCES(Consumer Electronics Show)において、新たに製造技術に特化した「先端製造ショーケース」が設けられることが発表されました。この動きは、製造業がテクノロジー産業の中核的な役割を担う存在として、世界的に注目されていることを示しています。

CESで「先端製造ショーケース」が新設

米国製造技術者協会(SME)とCESの主催者である全米民生技術協会(CTA)は、CESの会場に「先端製造ショーケース」を立ち上げることを共同で発表しました。これまで最新の家電やIT技術が主役であったCESにおいて、製造技術そのものが大きく取り上げられるのは画期的なことです。この背景には、近年の世界的な潮流が大きく影響していると考えられます。

なぜ今、CESで製造業が注目されるのか

この動きの背景には、いくつかの複合的な要因があります。第一に、グローバルサプライチェーンの再編です。パンデミックや地政学的リスクの高まりを受け、多くの企業がより強靭で安定した供給網の構築を迫られています。その中で、生産拠点の国内回帰(リショアリング)や、近隣国への移管(ニアショアリング)が進み、国内の製造能力の増強と高度化が喫緊の課題となっています。

第二に、AI、IoT、ロボティクスといったデジタル技術の進化です。これらの技術はもはやIT業界だけのものではなく、製造現場の生産性や品質を飛躍的に向上させるための不可欠な要素となりました。スマートファクトリーの実現に向けた動きが加速する中、「何を作るか」だけでなく「いかに作るか」という生産技術そのものが、製品の競争力を左右する重要な価値を持つようになったのです。最終製品であるコンシューマーエレクトロニクスと、それを生み出す製造技術は、もはや切り離せない関係にあるという認識が広がっています。

日本の製造現場への示唆

CESのような異業種の舞台で製造業が注目されることは、日本の我々にとっても重要な意味を持ちます。従来の製造業専門の展示会だけでなく、こうした場から最新の技術動向やニーズを把握することは、新たな発想を得る上で非常に有益でしょう。特に、これまで接点の少なかったIT・ソフトウェア企業との協業や、スタートアップが持つ斬新な技術の導入など、オープンイノベーションを加速させるきっかけとなり得ます。

現場レベルでは、自動化やデータ活用といったテーマがより一層重要になります。例えば、AIを活用した外観検査の自動化や、設備の予知保全、あるいはロボットによる工程の自動化などは、労働力不足や技能伝承といった国内の課題解決に直結します。CESで示される最先端のソリューションは、自社の工場が抱える課題を解決するための具体的なヒントを与えてくれるはずです。

日本の製造業への示唆

今回のCESでの動きは、我々日本の製造業関係者にとって、以下の3つの重要な示唆を与えてくれます。

1. 「作る技術」そのものが競争力の源泉となる
製品の機能や性能だけでなく、それをいかに効率よく、高品質に、そして持続可能な形で生産するかが、企業の価値を大きく左右する時代になっています。自社の生産技術を磨き上げ、その価値を再認識することが求められます。

2. 異業種との連携が不可欠に
ITやエレクトロニクス業界と製造業の垣根は、ますます低くなっています。自社の知見だけに頼るのではなく、外部の新しい技術やパートナーを積極的に取り入れ、自社の生産プロセスを変革していく姿勢が重要です。

3. 情報収集のアンテナを広げる必要性
これまでの業界の枠組みを超え、CESのような多様な技術が集まる場にも目を向けることが、新たなビジネスチャンスや課題解決の糸口を見つける鍵となります。経営層から現場の技術者に至るまで、幅広い視野で最新動向を注視していく必要があるでしょう。

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